中国主導のオープンソースAI、米国の優位性脅かす=米機関が警告

米国議会の諮問機関は、中国のオープンソースAI(人工知能)における主導的地位が「自己強化型の競争優位」を形成しつつあると指摘し、これにより中国は先進AI半導体チップの入手が制限された状況下でも米国の競合他社に対抗できる力を蓄えていると警告した。
コスト面での優位性に後押しされ、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)、月之暗面(Moonshot AI、北京市)、上海稀宇極智科技(MiniMax、上海市)など中国企業が開発する大規模言語モデル(LLM)は現在、HuggingFaceやOpenRouterなどの世界中のAI研究者や開発者が機械学習モデルやデータセットを共有・活用できるプラットフォームでグローバル利用ランキングで上位を占めている。
米中経済安全保障調査委員会(USCC)が出した報告書では、中国が製造業の基盤、工場、物流ネットワーク、ロボット技術の高度化を目的として、あらゆる分野でのAI導入を強力に推進していると指摘する。これにより現実世界のデータが生成され、そのデータがモデルの改善に再び活用されるという好循環が生まれている。
報告書は「このオープンなエコシステムにより、中国は計算能力に著しい制約がある状況下でも、最先端に迫るイノベーションを実現できている。中国の研究機関は、西側トップクラスの大規模言語モデルとの性能差をすでに縮めている」と明言した。
米国政府は2022年以降、最先端AIチップへのアクセスを遮断すべく、中国に対して複数回にわたる輸出規制を実施してきた。
一方、「ChatGPT」を開発するOpenAIや「Claude」を開発するAnthropicをはじめとする米国企業、およびMeta(メタ)、Microsoft(マイクロソフト)などの従来型のテクノロジー大手は、AI分野での地位を維持するために数千億ドルを投じてきた。しかしその地位は今、中国のオープンソースAIに脅かされる可能性がある。報告書は「オープンモデルの普及はAI分野のリーダーシップに新たな道を切り開いている」と指摘している。
米AIスタートアップの8割が中国オープンソースAIモデル利用
中国はフィジカルAI、エンボディドAI(具身知能)への転換を活用する準備を整えつつある。一部の試算によれば、現在、米国のAIスタートアップの約80%が中国のオープンソースAIモデルを利用しているという。
中国のAI開発企業、杭州深度求索人工知能基礎技術研究(DeepSeek、浙江省杭州市)が昨年発表した画期的なLLM「R1」はたちまちChatGPTを抜き、米App Storeでダウンロード数トップのモデルとなった。HuggingFaceのデータによれば、アリババのQwenシリーズモデルの世界累計ダウンロード数もメタの「Llama」を上回っている。一部の西側研究機関が中国のオープンソースAIモデルへの過度な依存に潜在的なセキュリティリスクがあると警告しているにもかかわらず、多くの企業がこれらのモデルの採用を続けている。
中国データ収集の優位性で進むフィジカルAI
報告書はさらに、AIの最前線が大規模言語モデルからエージェント型AIおよびフィジカルAIへと移行するにつれ、中国は膨大なデータ収集の優位性を活かして、ヒューマノイドロボット、自動運転ソフトウェア、さらにはデュアルユース技術の発展を推進する能力をより高めていると指摘する。
USCCのMichael Kuiken(マイケル・クイケン)副委員長は「フィジカルAI、エンボディドAIの分野における米中間の展開格差は存在する。この格差は時間の経過とともに拡大していくが、その拡大はすでに見え始めている」と述べる。USCCは、中国がバイオテクノロジー、量子コンピューティング、先進材料などの分野でAIをどのように応用していくかについても注視していると付け加えた。
中国はすでにフィジカルAI、エンボディドAIを将来の中核戦略産業に位置づけており、多くの中国有力ヒューマノイドロボット企業が今年のIPO(株式上場)を計画している。
騰訊網によると、ドイツの工業大手企業、Siemens AG(シーメンス)のRoland Buschr(ローランド・バスカー)最高経営責任者(CEO)は、中国のオープンソースAIを使って同社の産業オートメーション専用AIモデルを訓練することに「何ら問題はない」と述べ、コスト面での優位性とパラメーターのカスタマイズのしやすさを利点として挙げた。
Two Loops: How China’s Open AI Strategy Reinforces Its Industrial Dominance




