米グーグルTPUでHBM市場の勢力図が再編へ、韓国サムスンなどに追い風

米Google(グーグル)独自のAI(人工知能)半導体「TPU(テンソル処理ユニット)」エコシステムが拡大する中、HBM(高帯域幅メモリ)市場の構造が再び塗り替えられつつあり、サムスン電子など韓国勢の寡占構造がより強固なものとなったとみられている。

米NVIDIA(エヌビィア)向けGPU(画像処理半導体)市場では、サムスン電子や米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)などは競合しているものの、マイクロンは生産能力の制約により、事実上グーグルのASIC市場から撤退。専門家は、グーグルの資本効率を重視した戦略が、大規模生産能力を備えるサムスンなどにとってチャンスとなる一方、能力不足の後発組には参入障壁として働くと分析する。

グーグルTPUの急速な拡張は、世界のHBMサプライチェーンにおける競争環境を大きく変えている。TPUはグーグルが米ブロードコムと共同設計したAI専用チップで、1基あたり6〜8個のHBMを搭載する。現在、サムスン電子などがTPUサプライチェーンの中核となっており、各社は供給規模で激しく競り合っている。

なかでも焦点は「供給能力」。グーグルのような巨大テック企業が自社チップを量産する場合、安定した大規模調達が絶対条件となる。ところが、マイクロンは規模の面で要求に応じきれない。HSBCのデータによると、マイクロンの月間HBMウェハ処理能力は約5.5万枚で、サムスン電子(15万枚)の3分の1以下だ。業界関係者は「マイクロンは現状NVIDIAの需要すら満たすのに苦労しており、グーグルASIC向けの大口案件を同時にこなすのは構造的に不可能だ」と指摘する。結果として、規模の経済で韓国勢が優位に立つ構図が鮮明になった。

サムスン電子にとって、グーグルは“救世主”とも言える存在だ。グーグルの需要はHBM市場での巻き返しを図る絶好の好機になる。Counterpoint Researchによれば、サムスン電子は2024年Q4にHBM市場で40%のシェアを確保し2位だったものの、2025年Q2には15%まで急落し3位に転落。首位のSKハイニックス(64%)だけでなく、マイクロン(21%)にも後れを取った。

しかし、この状況は2026年から変化すると見られている。グーグルのTPU量産拡大が本格化するためだ。KB証券のKim Dong-won研究員は「今年の第7世代TPUはHBM3E(第5世代)を採用するが、2026年の第8世代はHBM4(第6世代)を使用する」と予測。「サムスン電子の2026年のグーグル向け供給量は今年の2倍以上になる」とも述べている。業界では、現時点でグーグル向けHBM供給シェアはサムスンと競合他社が拮抗、もしくはややサムスン優位とされているが、サムスンの積極的な増産により来年には情勢が逆転する可能性が高い。

AIブームにより半導体生産ラインがHBMへとシフトするなか、従来型DRAMの価格も“風船効果”として急騰している。HBM向けにラインを転換すれば、汎用DRAMの生産が減るためだ。DRAMeXchangeのデータでは、11月の8GB DDR4(PC向け汎用DRAM)の平均契約価格は8.1ドルで前月比15.7%上昇。8ドル突破は2018年9月以来、約7年2か月ぶりとなる。グーグルが主導するAI効率競争は“スーパーサイクル”到来を示し、先端HBM市場の再編だけでなく、従来型メモリ市場の価格上昇にも波及している。

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