中国OLED材料メーカーが急成長、ディスプレイ産業の勢力図に変化の兆し

中型ディスプレイ分野の普及が進むなか、OLED(有機EL)市場が急速に拡大している。低消費電力、高速応答、高画質、柔軟な曲面設計などの特性を武器に、OLEDはハイエンドノートPCやタブレット、車載ディスプレイへの採用が加速。中国ではパネルメーカーによるサプライチェーンの国産化が進展し、上流のOLED材料メーカーにとっては大きな成長機会となっている。

IT機器および車載分野でOLEDの採用が急増している。調査によると2025年にはAMOLED(フレキシブルアクティブマトリックス有機ELディスプレイ)ノートPCの出荷台数が600万台を突破し、普及率は3%に達する見込みだ。聯想(レノボ)、華為技術(ファーウェイ)、米HP(ヒューレットパッカード)など主要メーカーは、ハイエンドモデルにOLEDパネルを採用している。タブレットでも28年までにOLED搭載率が17.9%まで上昇し、米Apple(アップル)や韓国サムスン電子この潮流に乗る。

車載ディスプレイ市場でも成長

車載ディスプレイ市場でも成長が著しい。独メルセデス・ベンツ、BMW、比亜迪(BYD)などが次々にOLEDを採用しており、車載ディスプレイ全体に占めるOLEDの割合は23年の6%から27年には17%に達する見通しだ。スマートコックピットの発展に伴い、OLEDは単なる「表示装置」から「人と車をつなぐ中枢」へと進化している。

こうした需要増に対応するため、京東方(BOE)や維信諾(Visionox)など中国の主要パネルメーカーは8.6世代ラインの建設を進めており、生産効率の向上とコスト削減を図っている。8.6世代ラインは基板面積が従来の2.16倍となり、Tandem(タンデム)構造の採用で発光材料使用量も約4倍に増加。京東方の8.6世代AMOLEDラインは月産3.2万枚を計画し、高級ノートPCやタブレット向けに供給する予定だ。

Tandem構造のOLEDは、輝度や寿命を飛躍的に向上させる技術として注目されている。維信諾のViP技術では、従来のFMM方式AMOLEDに比べ最大4倍の輝度、6倍の寿命を実現。現在ではファーウェイの「Pura 80 Ultra」やレノボの「YOGA Pro 16 Aura AI」などに採用されており、2024年から2030年にかけて25%の年平均成長率が見込まれている。

国産材料メーカーの業績も堅調

国産材料メーカーの業績も堅調だ。莱特光電は25年第3四半期(7〜9月)に売上高1億3100万元(前年同期比18.6%増)、純利益5339万元(43.3%増)を記録。奥来徳も主要製品が業界大手に採用され、OLED材料事業の売上は3億〜3億3000万元に達する見込みだ。

また、艾森股フンによる棓诺新材の買収計画が注目を集めている。同社は1500種類以上のOLED前端材料を保有し、高純度ブルー系材料で国際的な競争力を持つ。万潤科技の子会社・三月科技は売上31.7%増、もう一社の九目化学はOLED中間体市場で世界シェア約23%を占めている。

資本市場でも動きが活発化。海谱潤斯や鼎材科技など多数の企業がIPOや増資を進め、業界全体の技術開発と量産体制強化を後押ししている。

市場調査会社UBI Researchによると、24年第1四半期(1〜3月)に中国パネルメーカーによるOLED発光材料の調達額が初めて韓国を上回った。世界のOLED発光材料市場は年間28億6000万ドル(約4347億2000万円)に達し、中国の材料需要は年平均10%超で拡大している。

依然として米UDC、日本の出光興産、LG化学、サムスンSDIなどが主要材料を供給しているが、韓国メディアによるとサムスン電子が中国メーカー製材料の採用を検討しているという。これは調達方針の大転換であり、中国企業の技術力向上を象徴する動きだ。海外メーカーの特許期限切れやコスト削減ニーズを背景に、OLED材料の国産化は不可逆的な流れとなっている。

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