インド、「半導体強国」へ180億米ドル超を投資

インドは、世界の半導体強国の一角を占めることを目指している。9月までに承認された半導体関連プロジェクトは10件、1兆6000億インドルピー(約182億米ドル)に達した。しかし、先進半導体分野では後発で、世界的なサプライチェーンにおける存在感も限定的だ。

インドが力を注ぐ「半導体計画」は、設計から製造、検査、パッケージングまで国内で完結するサプライチェーンの構築を目指す、という野心的な取り組みだ。9月までに承認された半導体関連プロジェクトは10件、総投資額は1兆6000億インドルピー(約182億米ドル)に達しており、その中には2カ所の製造工場と複数の検査・パッケージング工場が含まれる。

政策による突破口

インド政府は今年5月、新たに電子部品製造支援策を導入し、半導体計画を補完した。これまでインドには電子部品メーカーがほとんど存在せず、半導体の国内需要基盤が欠けていた。

新政策では、能動部品や受動部品の国内製造を支援し、潜在的な需要家と供給者のネットワークを形成。これにより半導体メーカーが現地でつながりを持つ土壌が生まれると見込む。

ただし、専門家は「インドは半導体メーカー誘致のために多くの優遇策を打ち出しているが、こうした投資は永遠には続かない」と冷静に分析する。

半導体業界の専門家は「インドに必要なのは数カ所のファブや検査施設ではなく、深みを持ち、長期的に持続可能なエコシステムだ」と指摘する。また、半導体メーカーが投資を決める際には、500以上の要素を考慮するとされ、その中には人材、税制、貿易、技術政策、労務コスト、法制度や慣習まで含まれ、「これら多くの面でインドは改善の余地が大きい」と述べる。

巨額プロジェクト

現在、最大規模のプロジェクトはインドのタタ・グループ傘下のTata Electronics(タタ・エレクトロニクス)と台湾の聯華電子(UMC)がグジャラート州に建設中の半導体工場で、投資額は9100億ルピー(約110億米ドル)に上る。同工場は電源管理IC、ディスプレイドライバー、マイコン、高性能演算用ロジックチップを製造し、AI(人工知能)、自動車、コンピューティング、データストレージ分野に供給される予定だ。

さらに、英国のClas-SiCウエハー工場とインドSiCSemが提携し、東部オリッサ州に同国初の商業用化合物半導体工場を設立。政府によれば、ここで生産される化合物半導体はミサイル、防衛機器、EV、家電、太陽光インバーターなどに応用されるという。

また、製造だけでなく、多くの中堅企業が半導体の検査・封装分野に関心を示しており、資本負担が比較的軽く収益性の高い封測事業に財閥系企業も参入している。OSAT(半導体組立・検査受託)はインドにとって大きなチャンスだが、持続的成長には市場参入条件や需要経路を明確にする必要がある。

もっとも、インドが本格的に世界半導体産業の一員となるにはまだ課題は山積しており、とりわけ2ナノメートル(nm)半導体のような先端技術の国産化実現には長い道のりが残されている。

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