トランプ政権、インテルに90億米ドルの出資を正式決定

トランプ米大統領は25日、米半導体大手のIntel(インテル)に対し約90億米ドル(約1兆3302億円)を出資し、9.9%の株式を取得すると発表した。苦境にある米国半導体大手を支援する狙い。ただ今回の資金注入だけでは、インテルのファウンドリー事業を本格的に成長させるには力不足だという。

インテルは現在、先端の14Aプロセスを支える外部顧客の確保に苦戦している。最高経営責任者(CEO)のLip-Bu Tan(リップ・ブー・タン、陳立武)氏は、もし大口顧客を得られなければ、ファウンドリー事業を断念せざるを得ないと警告している。

かつて米国製造力の象徴だったインテルだが、経営判断の遅れから製造でのリードを台湾積体電路製造(TSMC、台積電)に奪われ、AI(人工知能)チップでもNVIDIA(エヌビディア)に後れを取った。現在は18Aプロセスの歩留まり難題に直面し、品質確保ができなければ新規顧客の獲得は難しいとみられている。

今回の政府出資は、国内生産と雇用回復を掲げるトランプ政権の介入策の一環だ。インテルは総額1,000億米ドル超を投じて米国内の工場拡張を計画しており、年内にもアリゾナ州で量産を開始する予定だ。今回の資金調達でこれらの事業を加速する。

インテルによると、今回の89億米ドルは過去の22億米ドル拠出を上乗せしたもので、総投資額は111億米ドルに達する。さらに政府は5年間のワラントを獲得し、1株当たり20米ドルでインテル株の追加5%取得が可能となる。なお、今回の出資はソフトバンクによる20億米ドル投資に続くもの。

一方で、インテルが直面する市場競争は激しさを増している。TSMCは日本・熊本での投資計画を加速しており、第1工場は今年第4四半期に成熟プロセスで量産を開始、第2工場は27年までに稼働し、6nm/7nmプロセスを導入予定。日本政府も高額補助金を用意して後押ししている。対照的に、インテルは技術・市場の両面で遅れを取り戻す必要があり、技術革新と顧客開拓が生き残りの鍵となっている。

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