米テスラ、ロボタクシー「Cybercab」を2026年量産化へ
ハンドルやアクセルない完全自動運転
米電気自動車(EV)大手、Tesla(テスラ)のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は10日、米カリフォルニア州ロサンゼルスでAI(人工知能)を搭載した無人タクシー(Robotaxi、ロボタクシー)の試作車「Cybercab(サイバーキャブ)」を公開した。ハンドルやアクセルもなく、完全自動運転を想定したモデルで、2026年の量産化を目指す。販売価格は3万米ドル(約448万円)以下とする見込みだ。
サイバーキャブは、同社の完全自動運転機能「フルセルフドライビング(FSD)」をベースに、カメラと高性能レーダー「LiDAR(ライダー)」技術を搭載するとみられている。 またテスラは同日、同社が開発したロボタクシーサービスの呼び出しと支払いのための専用タクシーアプリも発表した。
マスクCEOは、「自動運転技術のおかげで、ロボタクシーは利用者の移動コストだけでなく、運行会社の運営コストも削減できる。FSDを搭載したロボタクシーは人間のドライバーの約10倍安全になる」と説明した。
サイバーキャブの運行コストは、1マイル(約1.6キロメートル)当たり約20米セント(約29.8円)で、税金やその他の手数料を含めても約30~40米セントになるという。
マスク氏はロボタクシーのほかにも、最大20人を乗せることができ、貨物輸送も可能で、なおかつハンドルもペダルもない完全無人運転のドライバーレスバン「Robovan(ロボバン)」のデモも行った。
ヒューマノイドロボット「Optimus」も披露。犬の散歩や子供の世話など、日常的な作業をサポートできる。会場では、観客もこれらのロボットと対話し、飲み物を注いでもらったり、プレゼントを取ってもらったりしていた。
米大手金融グループ、モルガン・スタンレーは今年4月の調査報告書で、テスラに対する楽観的な期待を維持し、「ロボタクシーの立ち上げは、テスラのビジネスモデルがハードコアなAIとロボット工学へとシフトしたことを象徴している」と評価。テスラのモビリティー事業の売上高は2030年までに170億米ドルに達し、総売上高の成長に直接貢献するだろうと予測している。
完全自動運転は米中間の競争に
ロボタクシーの開発では現在、中国と米国で加速しているものの、ロボタクシーを取り巻く環境には大きな違いもある。
米国では、既存のタクシーサービスの単価が高く、人件費も高いため、ロボタクシー導入の経済的価値と実現可能性が高く、投資コストを回収しやすい。一方、中国のタクシー業界は米国など先進国に比べて単価が低く、人件費も安いため、ロボタクシーの利益率は相対的に小さくなる。その結果、中国でロボタクシーが大規模に商業化されるには一定の時間がかかるとみられている。
中国では、技術の安全性と商業運転の実現可能性を検証するため、すでにいくつかの都市がロボタクシ ーを推進する実証区を指定。ここでトヨタ自動車とロボタクシーの開発を進めている中国自動運転技術のスタートアップ、小馬智行(PONY・AI、北京市)、広州文遠知行科技(WeRide、広東省広州市)、百度(バイドゥ)など多くの企業がすでに商業運転を開始している。
中国のロボットタクシー企業は海外事業も積極化している。
Nikkei Asiaがこのほど、百度が中国国外で自動運転タクシーサービス「Apollo Go(アポロゴー)」を開始する予定だと報じたほか、文遠知行はウーバーとの戦略的提携を発表し、ウーバーのプラットフォーム上で文遠知行の自動運転車の発売を共同で推進することを明らかにした。 小馬智行も東南アジア、欧州、中東を中心にロボタクシー事業の展開を計画しているとされている。