LiDERから4Dイメージングレーダーに代替進むか、中国で国産化の動き
中国で、自動車のリモートセンシング技術として4次元(4D)イメージングレーダーに注目が集まっている。視野角や解析度が限定される高性能センサー「LiDER(ライダー)」からの代替技術として、中国各メーカーによる国産化が加速しそうだ。
従来のミリ波レーダーは「速度(ドップラー)」、「距離」、「方位角(水平角度)」の3つを識別していたが、4Dイメージングレーダーはこの3つに「高度(上下方向)」情報を加えるため、角度分解能と精度が高くなり、より対象物の形を正確に識別できるようになった。またLiDERより細かい毎秒5~10フレームの点群データが得られるため、検知物が動いているかどうかも検出できる。
一方、4Dイメージングレーダーの解像度は、レーダーのアンテナ開口部(信号を受信または送信するためのアンテナの有効面積の大きさ)に依存している。 車載部品であるためレーダーサイズを無限に拡大することはできず、いかに合理的な方法でレーダーの解像度を向上させるかは業界の重要課題となっていた。
この課題の解決策として、納瓦電子(上海)は「3D空気導波管アンテナ」ソリューションを開発した。3Dリソグラフィー(3D積層チップを直接リソグラフィーする)と多少似ているが、3D導波管アンテナは3D空間を利用してRFフロントエンドのチャネルの開口部を強化し、角度分解能の向上を実現。 レーダーの小型化という設計要件も満たしている。
納瓦電子の4Dイメージングレーダー「NOVA77G-4D-S」と「NOVA77G-4D-IR」は、最大検出距離320メートル、角度分解能1.6°以内、距離精度 0.1m の能力を有している。 点群データ出力はマルチラインLiDERに相当する。 180メートルの距離から高さ10センチまでの缶などの静止した物体を識別することができるという。
蓋世汽車によると、納瓦電子(上海)はこのほど、自社開発した4Dイメージングレーダー製品が、自動車メーカー2社から受注した。
納瓦電子は2013年の設立。15年にスマートドライブのためのミリ波レーダー研究開発(R&D)センターを設立し、オランダの半導体大手、NXPセミコンダクターズ、米テキサス・インスツルメンツ(TI)などのチップをベースに4Dイメージングレーダーの開発を進めている。上海市嘉定区にあるミリ波レーダー製造工場の年産能力は108万台、年生産額は4億元以上に達している。最終的には年産能力1,800万台に拡大し、車両300万台以上の需要に応える計画だ。
自動運転車向けミリ波レーダーを手掛ける楚航科技(江蘇省南京市)も4Dイメージングレーダーを自主開発している。同研究プロジェクトは、中国工業情報化部の認可を受け、量産前の準備作業を行っている。
無線通信集積回路チップの研究開発を手掛ける恵州碩貝徳無線科技股フン(広東省恵州市)は先月28日、投資家向け対話プラットフォーム上で、4Dイメージングレーダー向け導波管アンテナの製造能力を持っていると明らかにしている。電機メーカーの中山聯合光電科技股フン(広東省中山市)も、持株会社の武漢天眸光電科技が4Dイメージングレーダー関連製品の開発を進めていると明らかにしている。
自動車業界調査会社の佐思汽研の調べによると、中国の乗用車市場におけるミリ波レーダーの総設置台数は22年には前年比34.5%増の1,648万2,000台に達した。25年には3,000万台に達すると予測している。 車載ミリ波レーダーの周波数は主に24GHZ帯と77GHZ帯に分かれている。中国工業情報化部は、2024年1月1日から24.25G〜26.65GHz周波数の車載レーダー機器の国内販売向け生産または輸入を停止すると規定している。77GHzミリ波レーダー市場の大半は海外大手メーカーが占めているため、現地化が急務となっている。