自動運転業界に淘汰・再編の波、投資マネー「ADAS」選好

自動運転車業界に再編・淘汰の波が訪れている。「レベル4」以上の高度な自動運転技術の実用化へのハードルは高く、自動運転分野のプレーヤーや投資マネーは、すでに実用化が進んでいるADAS(先進運転支援システム)の領域に視線を向けるようになった。潮流の変化に速やかに対応できない一部のプレーヤーは、道半ばにして市場からの退場を迫られている。

米フォードと独フォルクスワーゲンが出資する自動運転のユニコーン企業「アルゴAI」は昨年10月、ピッツバーグ、サンフランシスコ、ニュー・ジャージー州、ミュンヘンの事業停止を発表。トヨタ自動車が出資している中国の小馬智行(ポニー・エーアイ)は、リストラ観測が伝わった。自動運転の実用化でリードする米アルファベット傘下のウェイモは、かつて1,750億米ドル(約22兆6,007億円)だった企業価値が300億米ドルに下落した。

世界経済が低迷する中で、投資マネーは自動運転分野の投資を絞り込み始めている。未来の技術よりも、量産化や事業の収益能力をより重視するようになっており、高度自動運転技術開発を手掛ける新興企業は、自社の資金力が底をつけば、淘汰の危機に陥る。

実用化の見通しが明るいと思われていた商用車の自動運転プロジェクトも、形勢は楽観できない。米EC大手のアマゾンは昨年11月、小型の自動運転配送ロボット「スカウト」の実用化を進めるプロジェクトチームを解散させた。宅配最大手のフェデックスは、自動配送ロボット「Roxo」を使った配送事業を停止すると発表した。自動運転配送ロボットの先駆けとなった米スタートアップのNuro(ニューロ)は、社員2割のリストラを発表した。

自動配送ロボットはいまだ生産コストの高さが課題だ。Nuroが2018年に発表した完全無人の配送ロボット「R1」は生産コストが100万元に達し、運営費や開発費を加えれば、配送単価を6米ドルの高水準に設定してもカバーできない状況にあった。

「レベル4」自動運転の実用化が難航する一方、ADASはここ2年で市場が大きく成長した。ローランド・ベルガーの予測によると、2025年は世界全エリアの車両の40%に「レベル1」自動運転機能が搭載され、さらに「レベル2」以上の搭載比率は45%に達する見通しだ。

こうしたなか、これまで高度自動運転技術を手掛けていたスタートアップの中には、開発ターゲットをレベル2~レベル3へと絞り直す動きがみられる。

自動運転バスとロボタクシーの開発を手がける北京軽舟智航智能(Qcaft)は昨年、4代目となる量産車向けADAS技術ソリューションを発表した。車メーカーのニーズに合わせてソリューションの内容を変更できるのが特徴だ。自動運転スタートアップ広州文遠知行科技(WeRide)は独ボッシュとの提携を発表し、レベル2~レベル3自動運転ソリューションを共同開発していくと明らかにした。小馬智行はADASの独立事業部を立ち上げた。

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