中国ディスプレイ上場5社、25年上半期決算は明暗

2025年上半期、AI(人工知能)技術が牽引する消費電子機器のイノベーションや、産業・自動車市場の回復を受け、世界のディスプレイ業界は需給構造の改善が進み、サプライチェーン全体が回復基調に入った。世界最大のパネル製造拠点である中国本土は、その生産能力の比率を着実に拡大している。2025年上半期の主要上場企業5社の決算比較では、業界上位企業の成長が際立つ一方、企業間の差も明確になった。
中国国内では豪威集団(OmniVision)、天徳鈺、格科微(Gekewei)、新相微、中穎電子などの上場企業に加え、奕斯偉、集創北方といった非上場企業が競い合い、多様な競争構造を形成している。
売上高では明確な階層化が進んだ。豪威集団は売上高139億5600万元で首位を維持し、前年同期比15.42%増と堅調な成長を示した。格科微は36億3600万元で続き、30.33%増と高い伸びを記録。天徳鈺、新相微、中穎電子は売上規模こそ小さいが、天徳鈺は前年同期比43.35%増と5社中で最も高い成長率を示した。
成長差の背景には、技術力、顧客構成、製品競争力の違いがある。豪威は幅広い製品ラインと先進技術を武器に、確固たる地位を維持している。
利益は格差拡大
利益面では企業間の差がより鮮明となった。豪威集団の純利益は20億2800万元で48.34%増、天徳鈺は1億5200万元で50.89%増と高成長を維持した。一方、新相微は前年同期比261.78%増と急伸したものの、利益額は500万元と小幅にとどまった。
格科微は3000万元で61.59%減、中穎電子も4100万元で42.20%減と、収益力の低下が顕著だ。格科微は営業外損益を除くと赤字に転落した。
政府補助が収益を下支えも
各社が今年上半期に獲得した政府補助金は、格科微が5006万元で、豪威の2504万元を大きく上回った。天徳鈺(272万元)、中穎電子(456万元)、新相微(45万元)は限定的だ。
補助金は収益変動を緩和する効果を持つが、根本的な収益力の差を埋めるには至っていない。持続的成長には、技術革新と市場拡大力が不可欠だ。
粗利率は中穎電子が32%超
粗利率では中穎電子が32.51%で首位、豪威が30.48%で続いた。天徳鈺(24.41%)と格科微(21.84%)は中位。新相微は14.64%と低く、製品の付加価値やコスト管理の改善余地が大きい。
売掛金回転率では格科微が7.17回でトップ、天徳鈺(5.06回)、中穎電子(3.73回)、豪威(3.32回)が続く。新相微は2.06回と低く、回収リスクを抱える。
在庫額では豪威が79億5400万元、格科微が62億800万元と高水準だった。だが、在庫回転率では天徳鈺が3.27回で最も効率的だった。豪威は1.30回。格科微は0.47回と低迷し、在庫処理の課題が大きい。
財務の柔軟性に差
天徳鈺は流動資産比率91.58%で高い流動性を確保。新相微(79.34%)も柔軟性を持つ。一方、格科微(51.65%)、豪威(57.33%)、中穎電子(59.29%)は長期資産比率が高く、異なる戦略が示されている。
豪威のROE(自己資本利益率)は8.05%でトップ、天徳鈺が6.79%で続く。中穎電子(2.32%)、格科微(0.38%)、新相微(0.35%)は低水準。新相微、豪威、天徳鈺は前年から改善したが、格科微と中穎電子は低下した。
国産化の道、険しくもチャンス拡大
DDICはパネル産業の中核部品であり、その国産化はサプライチェーンの安全保障に直結する。豪威、天徳鈺、格科微はいずれも2024年に10億元超の売り上げを達成。新相微は約5億元を計上した。中穎電子はAMOLEDチップの検証導入段階にある。
一方、技術的ハードルの高いディスプレイドライバーIC(DDIC)分野、特にAMOLEDやMicro-LEDなどの高付加価値市場では、依然として国産化への課題が多い。現在、世界のDDIC市場は、台湾企業(Novatek=聯詠、Himax=奇景光電)や韓国のサムスンSystem LSIが主導している。中国企業は依然として技術力や人材、サプライチェーン連携の課題が残る。
国家政策の後押し、需要拡大、技術力の向上により、国産DDICはさらなる発展の好機を迎える特に豪威のROE8.05%、粗利率30.48%は高収益体質を示し、天徳鈺の在庫回転率3.27回は運営効率の高さを示している。
今後、AIによる電子製品革新と自動車のスマート化が進む中、需要は拡大基調を維持する見通しだ。国内企業は技術開発の加速、製品構成の最適化、運営効率の向上を通じて、激化する競争の中で存在感を高め、真の高付加価値国産化を実現することが求められる。



