米国の輸出規制で米エヌビディアのGPU「H20」輸出許可が必要に

世界最大の時価総額を誇る米半導体企業NVIDIA(エヌビディア)は、米国政府の新たな輸出規制により、AI(人工知能)向けGPU(画像処理半導体)「H20」の対中輸出に政府の許可が必要となると発表した。この措置は無期限で有効とされ、中国市場向けの供給に影響が出る可能性が出てきた。

H20は、従来のGPU「H100」より性能を抑えた「中国専用モデル」として投入された製品。今回の規制により、同社が中国などにチップを供給する際に、許可が下りなければ出荷できない状況となる。

エヌビディアは今回の規制に関連し、2026年度第1四半期(2025年4月27日まで)の決算において、H20に関連する在庫や契約、準備金として約55億米ドル(約7800億円)を計上している。

なお、4月15日の米国市場でNVIDIA株は1.35%上昇したが、時間外取引では6%以上下落している。

関税・輸出規制の二重圧力に直面

今回の輸出制限に加え、米国では関税政策の不確実性も高まっている。トランプ大統領の主導する「相互関税」政策のもと、米国政府は一部電子製品に対する関税の免除を発表したが、トランプ氏はその翌日「何の免除も発表していない」と発言。半導体・電子製品全体にわたる見直しを示唆した。

こうした政策変動を受け、エヌビディアはサプライチェーンの再構築に着手。4月14日には、電子機器受託製造サービス(EMS)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業および緯創(Wistron)と連携し、テキサス州にスーパーコンピュータ工場を建設する計画を発表。アリゾナ州ではチップのテスト・パッケージ工程を展開し、今後4年間で米国内に5000億米ドル相当のAIインフラを構築する方針だ。

このような不安定な政策を背景に、エヌビディアのコンシューマ向けGPUグラフィックカードの価格も変動している。第一財経によると、中国深セン市の電子市場「華強北」では、エヌビディアの「RTX 40」シリーズなどの価格が1枚あたり数百元上昇しており、PC全体の価格も上がり始めている。現地の販売業者によると、今後の価格動向は「関税次第」で読めないという。

AIチップ需要は世界的に拡大

一方、AI関連チップへの需要は世界的に増加している。米Google(グーグル)は年内に750億米ドルのAI・データセンター投資を計画。中国では阿里巴巴集団(アリババ・グループ)が今後3年間で3800億元(約7兆4100億円)をAI・クラウドインフラに投入すると発表し、騰訊控股(テンセント、広東省深セン市)もGPU購入を加速。24年の設備投資は107億米ドルで、第4四半期に急増したという。

テンセントは、AIアプリ「DeepSeek」対応などを背景にエヌビディア製H20を新たに調達したとされているが、公式にはコメントを避けている。国内企業による国産GPUの採用も進められてはいるが、現時点で大きな需要転換は見られていないとの指摘もある。

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