中国LLM各社、米OpenAIからの「引越し」キャンペーン

APIのブロック受け商機

米AI(人工知能)大手のOpenAIが7月9日から中国などサポート対象外の国・地域からのAPIトラフィックをブロックすることを受け、中国で大規模言語モデル(LLM)の生成AIサービスを提供するアリババなどIT各社が、「OpenAIからの引越しキャンペーン」の展開を始めた。

OpenAIのAPIは現在161の国・地域に公開されているが、中国本土と香港などはサポート対象の国・地域には含まれていない。今回のトラフィックのブロックによって、自然言語処理や機械翻訳、生成AIなどのユーザー企業の基幹業務プロセスがOpenAIのAI機能に依拠している場合、事業継続や顧客体験に大きな影響を与える可能性が出てきた。

OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はこのほど、今年半年間の売上高は34億米ドル(約5460億4000万円)に達し、前年同期の16億米ドルから倍増する勢いであることを明らかにしていた。 これには中国の開発者がOpenAIのAPIを呼び出すことによる売上も含まれているとみられる。

中国IT大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)傘下で、クラウドサービス事業を手掛ける阿里雲智能(アリババクラウド、Alibaba Cloud Intelligence)の企業向けLLMサービスプラットフォーム「阿里雲百煉(AliCloud Bailian)」はこのほど、OpenAI APIユーザーである中国の開発者向けに代替案として、同社独自のLLM「Qwen(通義千問(Tongyi Qianwen)」への移行サービスを発表した。移行の特典として最初の2200万トークン(文字セット)が無料。QwenはOpenAIの「GPT-4」レベルのメインモデルだが、1000トークン当たり0.004元と、GPT-4の約50分の1の価格に抑えた。

清華大学計算機科学からスピンオフで創業された智譜AIもこのほど、OpenAI APIユーザー向けに特別な「引越しプラン」をリリース。智譜AIのLLM「智譜GLM」はOpenAIシステムと完全に整合しており、安全な制御が可能としている。

李開復氏が率いるAI企業、零一万物もこのほど、「20%割引引越しプログラム」を開始し、OpenAIのユーザーにLLM「Yi API」へのスムーズな移行サービスを提供している。同社のLLM「Yi-Large」は、OpenAIの「GPT-4o」と性能はほぼ同等でありながら、価格設定は大幅に抑えられており、Yi-Largeに接続することで利用コストを72%削減することができるとしている。

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