EU、中国製インバーター排除へ 公共電力網から締め出し方針

欧州連合(EU)はこのほど、新たな融資規制を打ち出し、中国製インバーターを含む再生可能エネルギープロジェクトへの資金供給を制限する方針を明らかにした。EUは「信頼できない供給国」の重要部品を使用する案件を対象に、金融機関による融資を禁止する構えで、実質的には中国メーカーを狙い撃ちにした措置とみられている。
規制では、中国のほかロシア、イラン、北朝鮮も「信用できない国」に含まれるが、市場で圧倒的な存在感を持つ中国製部品が主な対象となる。
新ルールにより、欧州投資銀行(EIB)を含むEU系金融機関は、中国製の重要部品、特にインバーターを採用した太陽光、風力、蓄電関連プロジェクトへの融資が禁止される。EIBはEU域内の太陽光発電融資の約20%、陸上風力の約30%、さらに洋上風力の大部分で資金供給に大きな影響力を持っており、その撤退は関連事業に深刻な資金圧力を与える可能性がある。
EUは金融機関に対し、5月15日までに中国製インバーターを使用する案件を報告するよう要求。その後、11月までに案件ごとにサプライヤー変更の可否を審査し、完全な置き換え期限を2027年4月15日としている。
規制対象はEU加盟国だけにとどまらず、欧州電力網と接続するモロッコやバルカン地域にも及ぶ見通しだ。その手法は、かつて西側諸国が「安全保障リスク」を理由に中国通信機器大手の5G設備を排除した動きと酷似している。
統計によると、2024年のEUインバーター市場では、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省深セン市)と陽光電源(Sungrow)の2社だけで市場シェア61%を占めた。2018年時点では45%だったことから、中国勢の存在感が急速に高まっていることが分かる。
太陽光発電や風力発電の分野では、コスト削減が競争力を左右するため、高い性能と価格競争力を兼ね備えた中国製設備は、欧州の開発事業者にとって「事実上の標準」となっていた。
しかしEU側は、この市場構造を安全保障問題として位置付けている。EUの政策分析機関である欧州連合安全保障研究所(EUISS)は今年1月の報告書で、「中国製設備には遠隔操作によってエネルギーインフラへ影響を及ぼす潜在的リスクがある」と主張。その根拠として、中国企業が「法律上、政府との情報共有義務を負う」と指摘した。
一方で、今回の措置の本質は貿易保護主義にあるとの見方も強い。EUISSは1月に公表した「送電網の中のドラゴン:中国の欧州エネルギーシステムへの影響力を制限する」と題した報告書で、欧州が中国に技術面で後れを取っている現状や、中国製インバーターへの依存度を詳細に分析。そのうえで、「コスト上昇を伴ってでも最低限の域内生産比率を義務付け、中国製インバーターを公共電力網から排除すべきだ」と提言した。
EU側は、ドイツ、オーストリア、米国、イスラエルなどの企業が、中国製品の空白を迅速に埋められると期待している。
しかし、業界関係者や調査機関からは、こうした「強制的デカップリング」は最終的に欧州自身へ跳ね返るとの警告も出ている。代替サプライヤーの確保、設備の再認証、物流網の再構築など、あらゆる工程で追加コストが発生し、その負担は最終的に電気料金の上昇という形で欧州の消費者や家庭に転嫁される可能性が高いという。
市場調査会社Wood Mackenzieは、仮にEUが中国製インバーターを全面排除しても、中国企業の世界市場での優位性は揺らがないと予測する。中国メーカーは中南米、アフリカ、中東など高成長市場へ販路を切り替えることが可能だからだ。
むしろ、保護される側の欧州企業は、中国勢との競争圧力を失うことで、技術革新やコスト削減能力がさらに低下する恐れも指摘されている。




