BOEとサムスンの特許紛争、土壇場で和解

韓国と中国メディアによると、中国液晶パネル大手、京東方科技集団(BOE、北京市)と韓国サムスンディスプレイが、約3年続いたOLED(有機ELパネル)関連特許および営業秘密をめぐる訴訟について全面的に和解し、米国国際貿易委員会(ITC)に対して関連調査の終了を共同で申請した。

特許紛争は2022年末に始まり、23年に激化、25年半ばにピークを迎え、ITCが最終判断を下す直前に劇的な決着を迎えた形となった。複数の業界関係者は、今回の和解により、世界のディスプレー産業における競争の論理は、「一方が勝てば他方が敗れるゼロサム」から、「技術共有と利益共存」を伴う新たな競争と協調の段階へと移行しつつあると指摘している。

今回の特許戦争は、本質的には将来のディスプレー技術における主導権をめぐる争いだった。サムスンディスプレイが22年12月、BOEがOLEDパネル関連の4件の特許を侵害したとしてITCに337条調査を申請。翌23年初めには、営業秘密侵害の主張を追加し、元サムスン社員の転職を通じて重要な製造ノウハウを不正に取得したと訴えるとともに、米テキサス州東部地区連邦裁判所にも特許侵害訴訟を提起した。

これに対し、BOEも中国国内でサムスンに対する特許反訴を相次いで起こし、法廷闘争は長期化した。25年4~5月には、サムスンが同一裁判所で新たに3件の特許侵害訴訟と1件の営業秘密訴訟を提起。BOEも5月に反訴し、その24時間以内にサムスンが米バージニア州東部地区で再び提訴するなど、攻防は激化していた。

特許訴訟は競争手段の一つ

業界関係者は「特許訴訟は競争手段の一つであり、サムスンは交渉を有利に進めるため圧力をかけ、BOEは反訴で応じた」と語る。その背景には、市場構造の大きな変化がある。LCD(液晶ディスプレイ)分野では中国メーカーが圧倒的な地位を確立し、25年第1四半期の世界出荷シェアは中国勢が69.2%に達した。一方、サムスンは2023年以降LCD事業から撤退している。OLED分野ではなおサムスンが優位を保つものの、BOEの急成長は無視できない存在となっていた。

こうした緊張関係は、ITCの最終判断を目前にして一転する。韓国メディアによれば、最終裁定の数日前、ITCは手続きを停止し、双方からの共同取り下げ申請を受理したという。

約3年に及ぶ訴訟は、いずれの企業にとっても大きな負担となっていた。BOEにとっては、米市場への参入制限につながるリスクが現実味を帯び、サムスンにとっても中国市場での事業展開やサプライチェーンの柔軟性が損なわれていた。特に、サムスン電子がテレビ用LCDパネルを中国メーカーに依存せざるを得ない状況下で、BOEとの関係悪化は無視できない問題だった。

トップレベルの直接対話が転機

転機となったのは、2025年後半に入ってからのトップレベルの直接対話だ。今年7月にはサムスン電子ディスプレー部門のトップが中国を訪問し、BOEの会長と会談。12月初旬にはBOE側がサムスン本社を訪れ、LCDおよびOLEDパネル供給の拡大について協議したとされる。和解には、特許ライセンス料を含む現実的な合意も盛り込まれ、金額は約1兆ウォン(約1000億円)に上ると報じられている。

今回の和解は、両社だけでなく、世界のディスプレー産業全体に影響を及ぼすと見られる。特許紛争による不確実性が解消され、下流のスマートフォンやテレビメーカーにとっても安定した調達環境が整うためだ。中国が世界最大のディスプレー生産拠点となる中で、今回の決着は、中国企業が「製造主導」から「技術と標準を重視する段階」へと進みつつあることを象徴している。

Tags: , , , , , , , , , ,

関連記事