中国製EDAが再び注目、AIとの融合で進化も

AI(人工知能)を活用したEDA(電子設計の自動化)ソフトウエア再構築の潮流が急速に進展している。海外大手がAIを設計フローに統合する中、中国でも芯和半導体科技(上海)股フン(Xpeedic、上海市)などの国産EDA企業が国産AI大規模言語モデル(LLM)を開発プロセスに導入。自社開発の「XAIマルチエージェントプラットフォーム」により、EDAの設計パラダイムを従来の「ルール駆動」から「データ駆動」へと進化させている。

中国国務院(中央政府)がこのほど発表した意見書「AI(人工知能)+行動の深化」により、AIによる産業のスマート化が国家戦略として加速する中、半導体分野では演算能力・ストレージ・ネットワーク・電源などの中核技術の高度化が急務となっている。

AIハードウェアの発展はシステムレベルの技術革新を促進しており、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)、Advanced Micro Devices(AMD、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)、Broadcom(ブロードコム)などはチップレットパッケージングや異種統合を積極導入。AIサーバーやデータセンターでは、光通信や液冷などの高度技術を駆使した超大規模構成が主流になりつつある。その結果、EDAにはチップ間の高速信号干渉、電熱連成、構造応力解析など、多物理領域の高度な統合解析が求められるようになった。

特に大規模な単一チップ(モノリシックチップ)を機能ごとに分割し、複数の小型チップを一つのパッケージに集積するChiplet(チップレット)技術を用いた先進パッケージングが演算性能向上のカギを握り、AIデータセンター設計はシステムレベルでの複雑な統合工学へと発展。EDAツールも単一チップ設計から、パッケージング・システムレベルの協調最適化へと進化する段階に入った。

Synopsys(シノプシス)、Cadence Design Systems(ケイデンス・デザイン・システムズ)、Siemens EDA(シーメンスEDA)という世界のEDA大手3社はいずれも買収を通じてシステム解析EDAとマルチフィジックス解析能力を拡充している。

ただ従来のルールベースの手法は複雑なシステム最適化に対応しきれず、AIによる学習・推論能力が新たな突破口となっている。たとえばシノプシスの「DSO.ai」は強化学習で設計空間を自動探索し、米Intel(インテル)の「18A」や台湾積体電路製造(TSMC、台積電)の「N2/A16」プロセスで10〜15%のエネルギー効率改善を達成。ケイデンスも米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)と連携し、AIベースのEDA最適化を進めている。

一方、中国のEDA企業、芯和半導体は、チップレットパッケージング設計、PCBシミュレーション、クラスターレベルのSTCO(システム・テクノロジー協調最適化)統合システム分野で深い技術蓄積を持ち、「チップからシステムまでのフルスタックEDA」を先行して構築しているのが特徴だ。

中国産AI大規模言語モデルを開発プロセスに導入している。自社開発の「XAIマルチエージェントプラットフォーム」により、EDAの設計パラダイムを従来の「ルール駆動」から「データ駆動」へと進化させている。

AIとEDAの融合は、設計効率を飛躍的に高めるだけでなく、中国の半導体産業が独自のエコシステムを築く上での戦略的意義を持つ。AI時代の幕開けにあたり、芯和半導体など国産EDA企業の挑戦は、中国の「技術自立と産業強国」への新たな原動力となりそうだ。

芯和半导体

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