中国初の商用稼働トークン工場、海外向け2億ドルの大型契約を獲得

中国の通信インフラ運用大手、潤建股フン(広西チワン族自治区南寧市)は18日、全額出資子会社の五象雲谷有限公司が海外企業X社と、AIトークンの越境販売サービス契約を締結したと発表した。契約金額は2億ドル(約316億円)、契約期間は1年間。中国国内のトークンサービス事業者による海外向け初の大型受注とされ、同社のAI事業が商業化の新たな段階に入った。
今回の契約は、五象雲谷が運営する「トークン工場」を活用し、海外顧客に大規模言語モデル(LLM)の推論サービスを提供するもの。顧客はAPI経由でモデルを呼び出し、実際のトークン消費量に応じて料金を支払う。計算設備はすべて中国国内に設置し、海外顧客は国境を越えた通信ネットワークを通じてサービスを利用する。
契約には年間最低利用額として2億ドルが設定されており、契約期間中の利用料金がこの金額に達しない場合、顧客が不足分を補填する。料金は米ドルまたは同額の人民元で表示されるが、決済通貨は人民元に限定される。支払いは利用量に応じた後払い方式で、月次精算とする。取引先の企業名や登録地などは、機密情報の開示免除手続きに基づき公表されていない。
潤建股份は通信ネットワークの保守・運用事業を基盤に成長し、2018年に深圳証券取引所に上場した広西チワン族自治区の民営企業。2023年から「デジタル化されたスマート運用保守」から「AI+産業向けモデル」への事業転換を進めている。今年7月には、トークン工場のビジネスモデルが基本的に確立し、通常運営段階に入ったと発表していた。
同社のトークン工場「五象雲谷」は、広西チワン族自治区で最高水準の等級と最大規模を持つとされるAI計算センターで、現在の処理能力は毎時2,000億トークン。中期的には毎時2兆トークンへの拡大を計画している。智譜AIやKimiなどの大規模言語モデルを導入しており、エネルギー管理、モデル配備、計算クラスターの最適化、課金管理などを一体化することで、単なる計算設備の貸し出しとは異なるサービスを提供する。
海外展開を支える要因の一つが、広西の通信インフラだ。中国工業情報化部は2024年6月、南寧市に国際通信業務の出入口局を設置することを承認した。北京、上海、広州に続く全国4カ所目で、約30年ぶりの新設となる。広西では国際陸上通信ケーブル12回線と国際海底ケーブル3回線も整備されている。同社によると、南寧から東南アジア諸国連合(ASEAN)への通信遅延は約15~20ミリ秒、シンガポールまでは約20ミリ秒に抑えられている。
一方、同社は事業転換に伴う収益面の課題を抱える。2026年上半期の売上高は37億5,600万元(約886億4160万円)と前年同期比22.83%減少し、親会社株主に帰属する純利益は2,678万7,400元と31.72%減少した。通信ネットワーク、デジタルネットワーク、エネルギーネットワークの既存3事業はいずれも減収となった一方、計算ネットワーク事業の売上高は5億1,900万元と50.31%増加し、全社売上高に占める割合は13.82%に上昇した。
設備投資負担も大きい。五象雲谷の計算センターには総額36億元を投じる計画で、サーバーを除く投資額はすでに約13億元に達している。稼働初期は固定資産の減価償却負担が重く、計算ネットワーク事業の利益率を圧迫している。同社経営陣は、設備稼働率の上昇に伴って減価償却負担が分散され、2027年以降に利益率の改善が進むと見込む。2026年6月末時点の受注残高は約236億元だった。
市場では、今回の大型契約が中国国内の計算資源を活用した越境AIサービスの商業的な実現可能性を示す事例として注目されている。ただし、AI・計算資源・トークン関連の新事業は現時点で売上高に占める割合が限られ、契約の実際の収益計上額も監査済みの数値によって確定する。また、現在の処理能力は中期目標を大きく下回っており、増産投資や減価償却負担の吸収には時間を要する可能性がある。
潤建股フンはトークン事業に加え、ASEANでのAIエージェント事業も拡大している。マレーシアでは現地国有企業との合弁会社設立や、太陽光発電設備の保守管理、英作文の自動採点、航空・ゴム関連企業の業務支援などを手掛ける。同社によると、ASEANの10カ国・地域で事業を展開し、累計500件超の現地プロジェクトを受注、海外従業員は240人を超える。
今回の2億ドル契約は、トークン工場の事業モデルが海外市場で受注につながったことを示す一方、今後の焦点は、同様の契約を継続的に獲得できるか、そして越境データ通信の制度面の優位性を持続的なサービス収入と利益に結び付けられるかにある。




