中国AIモデルの海外商用展開が加速、月之暗面に続き智譜も海外クラウドに接続

中国のAI大規模モデル企業、智譜(Zhipu)が海外クラウド事業者との連携を進めている。中国のAIモデル企業による海外展開では、モデルを自社APIとして直接販売するのではなく、クラウド事業者と連携し、利用量に応じて収益を分配するモデルが広がりつつある。
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は6日、同社の大規模言語モデル(LLM)サービス「Amazon Bedrock」に智譜の「GLM-5.3」を搭載したと発表した。AWSは、モデルの利用量に応じて智譜と収益を分配する。
関係者によると、智譜はAWS以外にも、最近複数の海外クラウド事業者と同様の収益分配モデルを導入した。中国国内では、アリババクラウドの「百錬」など大手クラウド事業者と同様の契約を結んでいる。また、華為(ファーウェイ)クラウドにはGLM-5.3がすでに掲載されており、両社は同様の収益分配について協力する意向でも一致しているという。
今回の動きは、1週間以内に中国の大規模モデルが世界有数のプラットフォームの決済システムに組み込まれた2例目となる。
9月30日には、米AIインフラ企業のBasetenが、企業ユーザーがOpenAIのプログラミングツール「Codex」上で、月之暗面の「Kimi K3」とGLM-5.3を利用できるようにすると発表した。利用料金は企業がすでに契約しているOpenAI向けの購入枠に直接計上され、新たなサプライヤーとの調達手続きは必要ない。中国のオープンソースモデルが初めてOpenAIの企業向け有料決済ルートに入ったことを意味している。
これに先立ち、Amazon BedrockはKimi K3も搭載していた。中国の大規模モデル企業が、収益分配モデルを通じて世界有数のクラウド事業者にモデル機能を提供する初めての事例となっていた。
智譜と月之暗面の動きは、中国の大規模モデル企業が海外展開の戦略を転換しつつあることを示している。自社でAPIを販売するモデルの勢いが弱まる一方、クラウド事業者との連携を選ぶ企業が増えている。
この方式では、モデル企業がAIの能力を提供し、クラウド事業者が計算資源、海外の販売チャネル、企業顧客を担う。収益はモデルの利用量に応じて分配される。
この仕組みは以前から予告されていた。智譜の経営陣は9月16日のアナリスト向け電話会議で、国内外の複数の大手クラウドサービス事業者と収益分配契約を締結したと説明していた。
GLMシリーズのオープンソースモデルは、海外のクラウドプラットフォーム上にホスティングAPIとして展開され、関連収益は10月から計上するという。同社は年末時点のARR(年次経常収益)見通しも、従来の24億ドルから30億ドルへ引き上げた。
米モルガン・スタンレーのアナリストは9月16日のレポートで、今回の動きは、オープンソースモデルの普及と商用化が両立すると智譜の経営陣が判断していることを示すと指摘した。モデルの重みを公開することで利用範囲とエコシステムを拡大し、ホスティングAPIと収益分配の仕組みによって、大規模なモデル利用を収益へ転換する狙いだ。
米ゴールドマン・サックスも以前、中国のモデル企業が海外クラウド事業者と提携する利点として、収益の分配を受けながら、自社で推論処理のコストを負担する必要がない点を挙げている。これにより、粗利益率の改善が期待できる。
背景に海外での需要拡大
一連の収益分配契約が相次いで実現している背景には、海外市場における需要の急速な拡大がある。国産大規模モデルの利用状況にも、明らかな変化が表れている。OpenRouterの統計によると、同プラットフォームにおける中国モデルの世界利用シェアは6月初めに全体として米国モデルを上回った。7月下旬時点の直近28日間では、シェアは約63.5%に達したという。
現在、GLM-5.3やKimi K3などの中国モデルは、CursorやCodexといった開発者向け・企業向けツールにも相次いで接続され、海外ユーザーの利用基盤を築き始めている。
AWS、アリババクラウド、ファーウェイクラウドなど国内外のクラウド事業者が、利用量に応じた収益分配の仕組みを拡大すれば、今後、分配収益は一時的な追加収入から、中国の大手モデル企業にとって安定した通常収益へと成長する可能性がある。もっとも、海外クラウド事業者が利用量に応じた収益分配モデルを相次いで導入しているからといって、成長に上限がないわけではない。市場には機会とともに、限られた時間枠も存在する。
第一に、モデルの供給が同質化しつつある。GLM、Kimi、通義千問、DeepSeekなどは相互に代替性が高く、クラウド事業者側に選択権がある。そのため、モデル企業は収益分配率や精算ルールを巡る交渉で、十分な主導権を持ちにくい。
第二に、地政学や規制対応に伴うリスクもある。現在、中国製モデルの海外展開は、政策面で一時的に容認されている段階にあるとみられる。海外の規制方針が厳格化すれば、現在の海外展開ルートが制約を受ける可能性がある。




