中国でAIコンピューティングパワーのレンタル業界が活況

中国各地で、AI演算能力(コンピューティングパワー)向けにデータセンターなどのリソースをレンタルする新たば業態が活況となっている。ユーザーは自社でインフラを構築することなく、必要に応じてコンピューティングパワーリソースを利用する。特に製造業では、コンピューティングパワーのレンタルはデジタル化シナリオを強化することで、競争力を再構築するための重要なインフラとなっている。
コンピューティングパワーリソースのレンタルとは、クラウドサービスプロバイダーを通じてコンピューティングパワーリソースをレンタルするビジネスモデル。企業などユーザーは自社でインフラを構築することなく、必要に応じてコンピューティングパワーリソースを利用し、実際の使用量に応じて料金を支払うことができる。コンピューティングパワーリソースをサービスとして提供し、ユーザーの一時的なハードウェア向け固定資産投資コストも削減できる。
主な課金方式には、サーバー1台単位のレンタル、コンピューティングパワーの規模(P単位など)に基づく課金、およびGPU(画像処理半導体)カード1枚単位の細分化されたレンタルモデルがあり、さまざまな顧客の柔軟なニーズに対応している。
凌雄科技集団(広東省深セン市)は2025年にコンピューティングパワー機器のサブスクリプションサービスを開始し、GPUやサーバーなどの機器を回収し、回収・レンタル事業と連携させてレンタル可能なリソースへと転換することで、中小企業にコストパフォーマンスの高いレンタルサービスを提供している 。
企業間でリソースの争奪戦
27日付経済観察報によると、江蘇省無錫市を拠点とするある大手コンピューティングパワーレンタル企業の業務責任者は、大手インターネット企業との50億元(約1175億円)・3年間の長期契約を締結したばかりだ。彼の手元にあるコンピューティングクラスターの稼働率は100%に達し、受注は2028年まで埋まっているという。
江蘇省無錫市から1,300キロメートル離れた寧夏回族自治区中衛市では、中規模コンピューティングパワー企業の経営者がスマートフォンのサーバー監視画面を凝視している。彼の手元にあるのは数百P(算力単位、1P=1PFLOPS、毎秒約1,000兆回の浮動小数点演算能力)の国産コンピューティングパワーだけだ。「稼働率が70%を下回れば必ず赤字になる」と彼は試算している。
中国国営の通信分野の専門シンクタンク、中国信息通信研究院(CAICT、北京市)のデータによれば、コンピューティングパワーレンタル市場の規模は25年の328億元から26年第1四半期(1〜3月)には680億元へと急拡大し、通年では2,600億元を突破する見込みだ。
「カード(GPU)を持つ者が主導権を握る」
コンピューティングパワーレンタルの根本的なロジックは、「とにかくGPUを持っているかどうか」だという。「H100」「B100」「A800」などの米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)のハイエンドGPUはAIモデルの学習に不可欠だが、米国の輸出規制とチップ生産能力の制約から長期にわたって供給不足が続いている。中国信通院のデータでは、26年第1四半期のハイエンドスマートコンピューティングの不足率は35%に達し、H100だけで43万枚の不足が生じている。
江蘇省無錫市を拠点とするある大手コンピューティングパワーレンタル企業は、サプライチェーンの頂点に立つプレーヤーだ。同社は独自の資質を持ち、GPU調達サイクルが同業他社より6〜12ヶ月短く、コストは中小プレーヤーより30〜50%低い。戦略は明確で「ハイエンド学習コンピューティングパワーのみ、低レベルの推論コンピューティングパワーと国産チップ市場には手を出さない」というものだ。同社の責任者は「低レベル市場は供給過剰で価格競争が激しく、粗利率は紙のように薄い。ハイエンド学習コンピューティングパワーは輸出規制とチップ生産能力の制約から長期的に供給不足が続く」と指摘する。
同社の26年第1四半期、調達可能なコンピューティングパワーは3万8,000Pに達し(自社保有1万P、転貸2万8,000P)、手元の受注残は70億元超、粗利率は安定して53〜60%を維持している。同社はまた独自の液浸冷却技術を開発し、PUE(電力使用効率)を1.09〜1.1まで圧縮。これは業界平均の1.5を大幅に下回る水準だ。
一方、前出の寧夏回族自治区中衛市のチーム人員はわずか8人で、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、広東省深セン市)の「昇騰910」や海光DCUなどの国産AIチップ数百Pを保有するのみ。西部の電力コスト優位性(東部の1度あたり0.8〜1.2元に対して中衛地区は0.3〜0.4元)と「東数西算(東部のデータを西部で処理)」政策補助金が彼の生存基盤となっている。
企業ユーザーの三層構造
ユーザー市場は明確な三層構造を形成している。
| 顧客層 | 特徴 | 主なニーズ | 対応企業 |
|---|---|---|---|
| 第1層:大手IT・AIモデル企業 | 予算充分、需要安定、違約リスクゼロ | 「確実性」——安定した高端算力・信頼性の高い運用保守 | 張磊氏の企業 |
| 第2層:長三角の中小企業(製造業DX・金融テック・医療など) | 算力需要はあるが自社保有は困難 | 「柔軟・低価格・管理サポート付き」 | 聯雲世紀など中堅企業 |
| 第3層:西部の小企業・個人開発者 | 予算限定、短期レンタル希望 | 「とにかく安く、短期で」 | 馬洪遠氏のような小規模事業者 |
江蘇省無錫市に本社を置く聯雲世紀は第2層を主戦場とする。同社は安徽省芜湖市に独自のスマートコンピューティングセンターを建設中で、26年末に40メガワット(MW)の第1期を稼働させる予定だ。「単純な軽資産転貸業者という定義は2020年以前のモデルに過ぎない」と同社AIDC業務責任者のLee氏は強調する。
長期契約で囲い込む
前出の江蘇省無錫市を拠点とするある大手コンピューティングパワーレンタル企業の責任者は「中小プレーヤーは短期転貸で利ざやを稼ごうとするが、我々は3〜5年の超長期契約のみを手がける」と指摘する。26年第1四半期にハイエンドコンピューティングパワーのレンタル料が20〜30%上昇する中、長期契約は値上がり後の高粗利を確定させ、顧客からの前払い(30〜50%の手付金)が設備コストの約60%をカバーする強固なキャッシュフローをもたらすという。
ただし、ハイエンドGPUの世代交代サイクルはわずか2〜3年だ。25年末にエヌビディアがB100を発売した際、同社は事前にH100を全て3年長期契約で押さえた上でB100の配分を優先確保し、技術世代交代期を乗り切った。「短期は駆け引き、長期は独占だ。資源は上位に集中し、最終的には少数の大手がハイエンド市場を独占する。コンピューティングパワーのレンタルは天然独占型産業だ」と話す。
長江デルタ地域のある都市でデジタル経済・コンピューティングパワー産業の誘致担当者は「今のコンピューティングパワー分野の勢いは強すぎる。誰でも彼でも飛び込もうとしている」と語る。過去2年間で、補助金を受け取って逃げた投機的企業を十数社排除し、数十億元を投じながら最終的に未完成で終わったスマートコンピューティングセンターも目の当たりにしてきたという。




