中国、輸出禁止・制限技術リストにAI・バイオ医薬・太陽光発電の40技術を追加へ

中国商務部と科学技術部は16日、「中国輸出禁止・制限技術リスト」の改定案について、意見公募を開始した。2026年第48号公告に基づくもので、人工知能(AI)、バイオ医薬、太陽光発電の3分野で計40項目の重要技術を追加する案を示した。また、対象技術については、輸出前の登録を義務付ける暫定的な管理措置を導入する。

これに関連し、商務部の報道官は同日、記者の質問に答え、改定の背景や対象技術、企業への影響、国際技術協力への対応などについて説明した。

1.改定の背景:技術貿易管理の常態的な見直し

商務部報道官は、今回の改定について、特定の国・地域・企業を対象とした措置ではなく、法令に基づく技術貿易管理の通常業務の一環だと説明した。

中国の「対外貿易法」第20条は、国務院の対外貿易主管部門が関係部門と連携し、輸出を禁止または制限する技術のリストを策定、調整、公表することを定めている。中国政府は2001年以降、商務部と科学技術部が連携して同リストを複数回改定してきた。

近年は、AI、バイオ医薬、太陽光発電関連技術の機微分野への応用が拡大しており、主要経済国もそれぞれ輸出管理を導入している。中国政府は国際的な慣行を参考に、技術の管理不能な流出や不適切な拡散を防ぐ一方、通常の国際技術交流・協力を確保することを目指すとしている。

2.追加対象は40項目、うち14項目を輸出禁止、26項目を輸出制限

今回の改定案では、AI、バイオ医薬、太陽光発電の3分野で、計40項目の重要技術を追加する。

主な対象技術は以下の通り。

分野輸出禁止案(14項目の一部)輸出制限案(26項目の一部)
AIAIを利用したマルウェアの生成・変異技術AIを活用した脆弱性発掘技術
バイオ医薬独自知的財産権を持つ細胞・遺伝子治療の技術・プロセス基盤独自知的財産権を持つ汎用的な細胞・遺伝子治療の新規標的探索・検証技術
太陽光発電ペロブスカイト太陽電池およびタンデム型電池モジュールの製造技術など年間単線生産能力3万トン以上の多結晶シリコン製造に関するエンジニアリング技術など

なお、上表は公告で例示された技術の一部であり、具体的な対象範囲は公告原文で確認する必要がある。

商務部は、対象技術の多くについて具体的な技術指標を設定しており、関連技術を利用して製造した製品そのものは、原則として今回の管理対象に含めないとしている。また、一定の輸出形態には簡素化された手続きなどの便宜措置を適用する方針だ。

3.産業への影響を考慮、対象を限定し段階的に管理

商務部によると、今回の改定案の策定に当たり、商務部、科学技術部は関係業界の主管部門と連携し、研究機関や業界団体による評価を実施したほか、主要企業からも意見を聴取した。国内外の産業の現状や発展ニーズも考慮したという。

政策の特徴として、次の3点を挙げた。

  • 対象範囲の限定: 多くの技術について具体的な指標を設定し、管理対象を明確化することで、企業が遵守すべき範囲を把握しやすくする。
  • 手続き上の便宜措置: 一定の輸出形態について簡素化された許可手続きを適用し、政策の透明性と予見可能性を高める。
  • 管理対象の動的な見直し: 技術の発展に応じてリストを随時見直し、先進性を失った技術や旧式化した技術は対象から除外する。

商務部は、今回の意見公募も、より幅広い関係者から意見や提案を募るための措置だと説明している。

4.AI技術:安全管理を強化する一方、オープンソースや国際協力を支援

AI分野では、大規模言語モデル(LLM)、AIエージェント、コンピューティングクラスター、情報処理などに関する23項目の重要技術を追加する案が示された。

安全性と技術管理

商務部は、AIを利用したマルウェアの自律的な生成・変異などの技術が、国家の重要情報インフラ、防衛関連システム、政府の中核システムなどへの攻撃や、安全保障上の防御機構の回避に悪用される可能性を指摘した。

こうした技術が非国家主体や悪意ある組織に渡れば、国家安全保障や人類共通の安全に影響を及ぼすおそれがあるとして、必要な管理を通じて悪用を防ぎ、AIを人間の管理下に置くことを目指すとしている。

オープンソースと海外展開への配慮

一方、中国政府はAIのオープンソース開発や国際的な技術共有も支援する方針だ。

AI関連技術のオープンソース化、中国企業による海外での自社運営コンピューティングセンターの設置、海外での半導体製造(ファウンドリーへの委託を含む)、海外資源を活用した共同研究、国際標準の策定への参加などについては、一定の条件の下で自動許可などの簡素化措置を適用する。これにより、基本的には申請後速やかに輸出できる仕組みを目指す。

また、オープンソース化や学術論文の発表などを通じてすでに公知となっている技術は、輸出管理の対象に含めない方針を示した。

中国政府は、相互尊重と平等互恵を基礎とする国際的なAI対話・協力を支持するとともに、グローバルサウス諸国のAI能力向上やデジタル格差の縮小、持続可能な発展への貢献を目指すとしている。

AIモデルの海外展開はどこまで規制対象となるのか

商務部は、AIモデルの海外展開が輸出管理の対象となるかどうかは、中国国内から海外へ制限対象技術が移転されるかどうかが判断の核心になると説明した。

改定案が正式に施行された場合の取り扱いは、次のように整理される。

  • 海外でのローカル環境へのモデル導入: 制限対象技術に該当する場合、技術輸出管理の対象となる。ただし、海外の自社クラウドなど、リスクが比較的管理しやすいケースでは、自動許可などの便宜措置が適用される可能性がある。
  • API経由でのモデル提供: 制限対象の大規模モデルを利用したAPI提供は、モデル技術そのものの輸出管理の対象外とする。
  • アプリやウェブ経由での提供: APPやウェブ上の対話機能、SaaSサービスを通じた提供も、モデル技術そのものの輸出管理の対象外とする。
  • 端末上で動作する軽量モデル: ローカル端末向けの軽量モデルの展開についても、モデル技術そのものの輸出管理の対象外とする。

ただし、これらは商務部が説明した改定案上の取り扱いであり、対象となる技術の具体的な定義や、他の関連法令による規制の有無については、最終的な公告や関連規則を確認する必要がある。

5.バイオ医薬:生物安全保障を重視しつつ、国際共同研究を支援

バイオ医薬分野では、病原微生物、細胞・遺伝子治療、小核酸医薬に関連する5項目の技術を追加する案が示された。

商務部は、病原微生物関連技術が人間の健康や国家の生物安全保障に直接関係すると指摘し、輸出禁止措置を通じて生物安全保障上のリスクを抑制する方針を説明した。

一方、国際協力に対する配慮も盛り込まれている。

  • 独自の知的財産権を持つ細胞・遺伝子治療の技術・プロセス基盤について、海外へのライセンス供与や、当該技術を利用した研究開発・製造受託サービスの提供などは、管理対象から除外する。
  • 独自の知的財産権を持つ関連標的の探索・検証技術については、海外へのライセンス供与という形で輸出する場合、自動許可などの便宜措置を適用する。
  • 公衆衛生上の緊急事態、人道支援、海外資源を活用した共同研究などに必要な輸出についても、自動許可などの便宜措置を適用する。

中国政府は、国際的な技術協力を通じて医療・健康分野の発展成果を共有し、人々の健康増進に貢献する方針を示した。

6.太陽光発電:製造技術12項目を追加、一定の設備輸出にも登録義務

太陽光発電分野では、多結晶シリコン、シリコンウエハー、太陽電池の製造工程などに関する12項目の技術を追加する案が示された。

商務部は、太陽光発電技術が宇宙開発、防衛、無人機器、高い安全性が求められる重要インフラなどの分野で活用されるようになり、輸出に伴う安全保障上のリスクが高まっていると説明した。

一方、管理対象は限定的とし、指定された技術指標に達しない技術については、引き続き自由な輸出を認める方針だ。

また、公告で明示された一部の重要設備については、管理対象の技術を搭載・実装する場合に限り、規制を適用する。明示されていないその他の太陽光発電設備は、原則として今回の公告に基づく要件の対象外となる。

太陽光発電の重要技術は、生産ラインの輸出、設置、試運転、改良、アップグレードなどに伴って海外へ移転することが多い。このため、こうした活動を行う事業者は、規定に従って技術輸出許可を申請し、許可証に基づいて外貨、銀行、税務、税関などの関連手続きを進める必要がある。

7.正式改定まで輸出前登録を義務化

今回の公告では、輸出需要の把握や管理精度の向上、潜在的な輸出リスクの防止を目的として、暫定的な輸出前登録制度も導入された。

商務部と科学技術部の2026年第48号公告の公布日から、技術リストの正式な改定公告が施行されるまでの間、対象技術を輸出する事業者は、商務部の業務システム統一プラットフォームにある技術貿易管理情報システムで事前登録を行う必要がある。

対象技術に該当するかどうかは、輸出事業者自身が判断する。すでに開始しているものの完了していない輸出案件も、登録対象の範囲に含まれる。

登録が必要となる主なケースは以下の通り。

  • 技術の所有権を海外へ移転する場合
  • 中国国内の技術について、海外企業などに使用を許諾する場合
  • 中国国内の技術の所有者または実質的な支配者が海外主体に変更される場合
  • 商務部が登録を求めるその他のケース

特に、技術リストの管理対象に含まれる太陽光発電の重要・中核設備の輸出については、規定に従った登録が必要となる。企業が登録手続きに関して問題や困難に直面した場合は、商務部または科学技術部に問い合わせることができる。

商务部 科技部公告2026年第48号 就修订《中国禁止出口限制出口技术目录》公开征求意见并对相关技术出口实施临时登记管理

商务部新闻发言人就修订《中国禁止出口限制出口技术目录》答记者问

関連記事