BYD、人型ロボットの外観特許を公開

中国の電気自動車(EV)大手、比亜迪(BYD、広東省深セン市)は、2022年のチーム発足から外観特許の確定まで、約4年で自動車メーカーからロボットメーカーへと事業領域を広げる重要な一歩を踏み出した。中国国家知識産権局は10月9日、BYDが保有する外観設計特許「具身知能ロボット」を公開した。
登録公告番号はCN310247768S。出願日は2026年4月30日で、設計上の特徴は形状にある。用途については、「歩行、バランス、インタラクション機能を備えたスマートロボットで、サービス、教育、産業分野に応用できる」と明記されている。これは、BYDが自社開発する人型ロボットの外観が初めて正式に公開された事例となる。
特許図面によると、この人型ロボットは黒と白を基調としたボディーカラーを採用している。頭部は丸みを帯びた曲面形状で、外部に突出したディスプレーは備えていない。胴体、腕、脚には多数の関節構造が配置され、四肢は高い自由度で動作する設計となっている。
全体のシルエットは、BYDの何志奇氏が7月28日にソーシャルメディアで予告した「小迪」のコンセプト画像とよく似ている。これにより、今回の特許図面が、すでに鄭州の「迪スペース」で公開された「小迪」に対応するものである可能性が高まった。
「小迪」はBYDが開発した商用サービス向けの人型ロボットで、8月初めに鄭州の「迪スペース」で実機が初めて一般公開された。BYDによると、身長は1.61メートル、体重は58.5キログラムで、成人女性に近い体格となっている。全身には31の運動自由度があり、ロボットハンドの繰り返し位置決め精度は±1ミリメートルに達する。
物品の把持、ジェスチャーによる交流、指差しによる説明など、細かな動作にも対応できるという。特許出願日が4月30日で、実機の一般公開が8月初めだったことから、BYDはロボットを公開する前から外観設計に関する知的財産権の確保を進めていたことが分かる。
BYDのロボット開発の歩み
BYDは2022年の時点で、すでに具身知能の研究チームを正式に立ち上げていた。自社が持つ大規模な製造現場や販売・サービス拠点の需要を背景に、さまざまなタイプのロボット本体とシステムのカスタマイズ開発を進めてきた。
投資面では、BYDはまず智元ロボットに出資した。さらに2025年4月には、触覚センシング技術と人型ロボットを手がけるパシーニ・センシング・テクノロジーに10億元(約236億円)を超える戦略投資を実施し、13.3738%を取得した。同社にとって筆頭の外部株主となった。これは、ロボットの「感覚機能」を高めるうえで重要とされる触覚センサー技術を見据えた投資であり、BYDが具身知能分野で実施した最大規模の投資案件となった。
2024年末には、BYDの採用公式アカウントが具身知能研究チームの採用情報を公開し、ロボット開発を全面的に加速する姿勢を示していた。
2025年8月には、BYDが出願した「ロボット」に関する特許が公開された。このロボットは、自動充電・自動空気入れ機能を統合しており、車両を自動的に充電するほか、タイヤ空気圧の測定や空気の補充にも対応する設計だった。この特許は、BYDのロボット研究が自動車事業と密接に連携していることを示している。
2026年は、BYDのロボット事業が水面下から公の場に姿を現した年となった。5月末、BYDグループの李柯・執行副社長は、同社が人型ロボットを開発していることを初めて公式に認めた。李氏は、自動車分野で蓄積したAI、モーター、バッテリー、電動制御などの技術はロボットと高い共通性があり、直接転用できると説明した。
6月には、カンヌ国際クリエイティブ・フェスティバルで米Business Insiderの編集長から取材を受け、人型ロボットは家庭やサービス業において巨大な市場になるとの見方を示した。李氏は、「すべての店舗に2~3台のロボットを置くことが目標だ。ロボットは顧客に製品を説明し、店内を盛り上げ、車両の展示や実演もできる」と述べた。
7月28日、BYDは中国メディアに対し、人型ロボットを8月に正式公開すると説明した。8月初めには「小迪」が予定通り実機として初公開され、鄭州や深センなどの「迪スペース」体験センターに配備された。これらのロボットは、来場者の出迎えや接客、車種の説明などを担当している。10月9日に外観特許が公開されたことで、BYDの人型ロボットを巡る知的財産権の整備も一段落した。
BYDはなぜロボットを開発するのか
人型ロボットとスマート電気自動車は、技術基盤に多くの共通点を持つ。センシング、意思決定、運動制御、ソフトウエア統合、ハードウエア設計に加え、カメラ、センサー、モーター、バッテリーなどの部品構成も類似している。李氏は、「自動車に搭載しているソフトウエアの複雑さをロボットに移植することは、われわれにとって難しくない」と説明している。
自動車メーカーが相次いで具身知能に参入するなか、米電気自動車(EV)大手のTesla(テスラ)の「Optimus」や小鵬汽車(シャオペン)の「Iron」もすでに開発を進めている。自動車大手がロボット事業へ進出することは、技術移転の有効なルートとして実証されつつある。
BYDの構想を支えるのは、既存の販売網だ。多くのロボットスタートアップがゼロから販売チャネルを構築する必要があるのに対し、BYDは世界各地に販売店と体験センターを展開している。「迪スペース」は、新技術や新製品を発表する場として機能している。李氏は、まずショールームのロボットが来場者の出迎え、製品説明、実演を担い、将来的にロボットが家庭に普及すれば、既存の自動車販売網を通じて販売する構想を示している。同じ店舗が、ロボットの展示場であると同時に、将来の販売拠点にもなるという考え。
市場の成長余地も大きい。米モルガン・スタンレーは、世界の人型ロボット市場が2025年の約30億ドル(約4747億円)から、2030年には約280億ドルに拡大すると予測している。
中国国内の自動車市場で競争が激化し、新たな成長分野を必要としているBYDにとって、人型ロボットは自動車事業との相乗効果を生かしながら、第二の成長曲線を描ける分野となる可能性がある。ただし、李氏は、ショールームのロボットが人間の販売員と顧客との「感情的なつながり」を置き換えるわけではないとも説明。「人間の従業員は今後も必要だが、ロボット技術によってサービスをさらに改善できる」と述べている。




