中国人型ロボットの手の部品サプライヤー、評価額が200億元に

中国ヒューマノイドロボット開発大手の杭州宇樹科技(Unitree Robotics、浙江省杭州市)や智元機器人(Agibot、上海市)にロボットの手の部分「霊巧手」を供給しているサプライヤーである霊心巧手(北京)科技股フン(Linker Hand、北京市)が、約200億元(約4620億円)の評価額で新たな資金調達ラウンドを模索中だという。
ヒューマノイドロボットが注目される背後で、史上最も高価な「手」が生まれたと言えるだろう。霊心巧手が設立されたのは2023年7月で、まだ2年余りしか経っていない。1カ月前に同社がBラウンドの資金調達を公表した時点で調達後評価額はすでに100億元に達していたが、わずか1カ月後には評価額が倍増し、再び過去最高を更新した。
公開情報によれば、霊心巧手は現在、月産1,000台以上の高自由度霊巧手を量産できる世界唯一の企業であり、グローバルの高自由度霊巧手市場で80%以上のシェアを占めるとされている。ヒューマノイドロボット完成機メーカーに比べ、霊巧手の関節モジュール・センサーなどのコア部品は完成機メーカー共通の必須需要だ。どの完成機メーカーが勝ち残っても、これらの部品は必要になる。しかも霊巧手の技術的難易度は極めて高く、量産と安定した性能を両立できる企業はごく少数だ。
200億元という評価額はこの分野でどれほどの水準なのか。横断的に比較すると、杭州宇樹科技の上場申請書によれば2025年6月の直近の市場化株式調達における調達前評価額は120億元、調達後は127億元だった。北京銀河通用機械人(北京市)の調達後評価額は30億ドル超(約4740億円)、智元機器人はBラウンド完了後の評価額が150億元に達した。つまり、ロボットに手を提供するサプライチェーン企業の評価額が、トップクラスの完成機メーカーを上回ったことになる。
同社は昨年末にわずか数カ月で売上高が1,000万元から2億5,000万元へと25倍に成長した。その結果、資金調達が加速し、評価額が急上昇した。評価額は16億元から30億元へ、そして一気に100億元へと跳ね上がり、今や200億元に達した。
宇樹科技がこのほど上場申請書を公開し、2025年1〜9月の売上高は11億6,700万元(約1852億290万円)に達し、通年の人型ロボット出荷台数は5,500台で世界首位となったことが分かったが、霊心巧手などのサプライヤーがこの成長を支えている。
霊心巧手は2025年中に6ラウンドの連続調達を行った。25年4月にシードラウンドで1億元超を調達し、同年8月にはエンジェルラウンドで数億元を調達し、中国IT大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)が主導、中金資本・上海半導体装備基金などが追随した。10月にはAラウンドで数億元を調達し、京国瑞・博佳資本が主導した。11月にはA+ラウンドで数億元を調達し、浙江創新投資・徳清産投・鼎暉百孚・楽聚ロボット・オークスなどが参加した。12月にはA++ラウンドでセコイア・チャイナ・創世伙伴創投などが加わった。
26年2月には同社がBラウンドで約15億元の調達を公表し、道得投資・盛世投資・新鼎資本などが出資、調達後評価額は100億元に達した。そして新たなラウンドが200億元の評価額で進行中だ。内部情報によれば、2026年のIPO申請を目指しているという。順調に進めば、この会社は誕生から上場まで5年もかからない可能性がある。
バブルではない
一方、具身知能(エンボディドAI)はまだ一般家庭に普及しておらず、霊巧手への大規模需要はまだ顕在化していない。各プレイヤーにチャンスはあり、誰が速く成長し、誰がより高い競争の壁を築けるかが問われている。
創業者の周永氏は最近の中国メディアインタビューで、「バブルの本質はストーリーだけで製品がなく、資金調達だけで納品がないことだ。ロボット業界全体がすでに量産段階に入り、霊巧手の普及も実際の現場への展開と商業化のクローズドループの実現を後押ししており、技術・製品・顧客・データがすべて継続的に実証されている。これは実質的な成長であり、バブルではない」と述べた。
周氏はまた、「フィギュアAIの約400億ドルという評価額と比べれば、中国の具身知能企業の現在の評価額はまだ低すぎる」とも語り、「2年以内に中国のトップ具身知能企業は1,000億元規模の時価総額に達し、5年以内には1兆元規模に達するだろう」と述べた。
ロボットの部品に特化
周永氏は1986年生まれで、2000年には華中科技大学の少年班に合格した。霊心巧手の前には2度の起業経験がある。1度目はゲームとコミュニティで3Dシミュレーションデータの応用フレームワークを構築し、2度目は自動運転車で豊富なセンサー活用経験と自動運転アルゴリズムの蓄積を積んだ。一見バラバラに見えるこれらの経験が、最終的に具身知能という一本の軸に収束した。
2019年にチームが最初の霊巧手を開発した際、海外で小型減速機の調達を試みたが、精度が不十分でコストが高く、カスタマイズもできなかった。そこで自社開発を決意した。ハードウェアもソフトウェアも既製のソリューションはなかった。現在、霊心巧手のチームは設立当初の約50人から約300人規模に急拡大した。霊心巧手は今後も部品に特化し、本体(完成機)は手がけない方針だという。
全スタック自社開発によってコスト構造を大幅に再構築し、下流顧客の導入を加速させた。たとえば軽量化新製品のLinker Hand O6は標準版の定価が6,666元、Liteバージョンは補助金適用後わずか3,999元だ。周氏はさらに価格を引き下げる計画を持ち、Oシリーズは最終的に499元レベルまで下げ、具身知能を学ぶ学生でも購入できるようにしたいと述べている。
全スタック自社開発
霊心巧手にとって全スタック自社開発はコスト削減だけでなく、データという大きな戦略でもある。自社開発のハードウェア基盤を通じてマルチモーダルデータ収集システムを構築し、人間の手のスキルデータベースを蓄積している。同社は霊巧操作データセット「LinkerSkillNet」を構築し、シミュレーターによる訓練ではなく実際の物理世界からのデータ収集にこだわることで、霊巧手が手の動作を学習する精度と効率を高めている。
世界のロボット市場は大きく拡大しており、この「手」の市場はまだ拡大し続けるとみられている。GGIIの予測によれば、2030年の中国ロボット霊巧手市場の販売台数は34万台を突破し、24〜30年の複合成長率は約90%に達する。QYResearchは30年のグローバルロボット多指霊巧手市場規模が50億ドルを超え、2024〜2030年の複合成長率は64.6%に達すると予測している。
ロボットの最終的なグローバル市場の勢力図について、中国が最後の勝者になるという見方もある。戦略的なトップダウン設計に加え、中国は希土類・高性能磁石・物理部品・電池に至るまで、完全で効率的なサプライチェーン体系を持ち、すべてを国内調達できる。これは中国メーカーが調達コストと製品開発時間において生来の優位性を持つことを意味する。さらに中国は世界最大のアプリケーション市場であり、ロボットに豊富な試行錯誤のデータを提供し、技術の急速な進化を促している。周氏は「最終的には5社が残るだろうが、その5社はおそらくすべて中国企業だ」というのが周永氏の答えだ。




